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【ボローニャ歌劇場】アルベルト・ガザーレ インタビュー掲載

「《リゴレット》は完璧なオペラなのです」〜アルベルト・ガザーレ、《リゴレット》を語る

6月に来日するボローニャ歌劇場は、イタリア屈指の名門歌劇場だ。今回上演される《リゴレット》は、2016年に初演されたヒットプロダクション。3月の現地公演では、来日公演でも主役をつとめるアルベルト・ガザーレがリゴレットを歌い、客席を熱狂させた。終演後、ガザーレを楽屋に訪ね、《リゴレット》の魅力と日本公演への抱負について語っていただいた。

取材・文:加藤浩子

—ガザーレさんはイタリアを代表するヴェルディ・バリトンとして世界で活躍されていますが、《リゴレット》のタイトルロールは十八番のひとつですね。この作品の魅力をおきかせいただけますか。

ガザーレ(以下G):《リゴレット》はヴェルディの数あるオペラのなかでも、《オテロ》とならんで完璧なオペラだと思います。原作はヴィクトル・ユゴーなので、ドラマの原型はユゴーにあるわけですが、オペラの台本は原作よりはるかに薄い。けれどヴェルディの音楽は、その短い台本のなかですべてを語っています。音楽がひとつの統一体になっている。ヴェルディには「統一する力」があるのです。音楽は一見シンプルですが、とても深い。すべての音符があるべきところにあって、何かを表現している。だから演出が変わっても、心に届く。

たとえば(歌う)「あの老人、俺を呪った!」この短いフレーズ、1音1音が正しい場所にあると思いませんか。心に響くし、美しい。まさに天才です。

—今回のガザーレさんの解釈では、リゴレットという人物がとても人間的で繊細に感じられました。

G:リゴレットは、醜く生まれついただけでなく、モンテローネ伯爵の呪いを受けてから精神的にダメージを受けています。一方で彼は、娘のジルダを子供のままにしておきたい、堕落している世間に出したくないのに、ジルダは成長してしまう。そして初めて出会った男性に恋してしまう。そこから「ドラマ」が始まるのです。

私はある役を歌う時、それまでの経験を忘れて、いつも初役のつもりで取り組むようにしています。歌うことも好きですが、演じることもとても好きなので。今回も、演出家のピッツェック〜素晴らしい演出家です〜と、徹底的に役作りを相談しました。今回の演出では、リゴレットは腕に醜い傷がある設定になっていますが、目に見えるところに傷があることで、彼はいつも自分の醜さと向き合わなければならない。彼の苦しみがより伝わりやすいのではないでしょうか。

—今日は公演も素晴らしく、客席の反応も熱狂的で、舞台と客席がひとつになり、まさに「劇場は生きている!」と思いました。日本でもこのような熱狂が生まれるのではないかと期待しています。

G:ボローニャ歌劇場は素晴らしい劇場です。建物も素晴らしいし、音響もクリアで、何より豊かな歴史を持っている。ここで《リゴレット》を歌えるのは幸せなことです。そして、それを日本に持っていけるのはもっと幸せです。日本の聴衆の方々は、純粋に喜びや感動を求めてオペラに来てくれる、世界でも類をみないほど素晴らしい聴衆なのですから。