イタリア・バーリ歌劇場
「トゥーランドット」

イタリア・オペラの精髄を
今に伝える名門歌劇場、初来日!

バーリ歌劇場《トゥーランドット》への期待

プッチーニ最後のオペラ《トゥーランドット》は、とてつもなく美しく、とてつもなく野心的な大作だ。プッチーニ初めての試みである古代中国を舞台にした壮大なおとぎ話に、彼お得意の泣かせるメロドラマと美しい旋律(大ヒットメロディ「誰も寝てはならぬ」は本作のハイライトである)が合体して、初心者から通まで誰でも楽しめるオペラができあがった。

このたび来日するバーリ歌劇場の《トゥーランドット》は、本作の真髄が味わえるプロダクションである。ロベルト・デ・シモーネによる演出は、大階段を中心に、大きな銅鑼や石の宮殿、中国の兵馬俑を連想させる兵士などを配し、伝説の時代の「古代中国」の雰囲気をふんだんに盛り込んだもの。場面の雰囲気を反映して移り変わる照明や、とりどりの衣装も美しい。また今回、バーリ歌劇場で上演されている、プッチーニの絶筆通り、リューの死で終わるヴァージョン(初演の時トスカニーニがスカラ座で指揮したヴァージョン)が上演されるのもたいへん貴重だ。

肝心のキャストも粒ぞろい。トゥーランドット役のグレギーナとカラフ役のベルティは、メトロポリタン歌劇場でも《トゥーランドット》で共演した、世界のトゥーランドット&カラフ歌い。イタリア期待のリリック・ソプラノ、セペのリューも楽しみだ。そして指揮は、バーリ国立歌劇場常任指揮者のビサンティ。2017年3月、新国立劇場で《ルチア》を振って大成功を収めた彼を、覚えている方も多いはず。歌心とドラマの感覚に富んだその才能を、イタリア・オペラの大人気作で存分に発揮してくれることだろう。

音楽評論家 加藤浩子