公演まで秒読みとなったマリボール歌劇場《アイーダ》。伝統的で美しいプロダクションであることはお伝えしたが、現代に通じる隠し味も忍ばせている。全曲の冒頭で、考古学者が抱き合った恋人たちのミイラを発掘し、そこから古代エジプトの物語が始まるという、ちょっぴりロマンティックな味つけがされているのだ。
物語と音楽の美しさを尊重しながら、私たちの心に響く奥行きを加える。そんな公演を提供しているマリボール国立歌劇場は、スロヴェニア共和国唯一の国立歌劇場であり、同国の文化の顔でもある。公演の質を保つため、国の予算も手厚い。劇場のスタッフもベテランから若手まで層が厚く、オペラ部門のトップはスロヴェニア期待の若手指揮者。現地で何人かにインタビューしたが、皆劇場への愛にあふれており、一丸となっていい公演を作っていこうという意欲が感じられた。
古都に根づく、国際レベルのオペラ公演。それはオペラファンにとって、ひとつの夢なのではないだろうか。