1923年に創設された、ドイツの放送オーケストラの中でも屈指の歴史を誇る名楽団。東西ドイツの統一を機にライプツィヒ放送フィルを併合した大組織となり、正式名称をMDR交響楽団(ただし英語表記はMDRライプツィヒ放送交響楽団)に変更した。以後、バッハやメンデルスゾーンゆかりの老舗音楽都市ライプツィヒに本拠を置きながら、MDR(中部ドイツ放送)が管轄するザクセン=アンハルト州、テューリンゲン州、ザクセン州に音楽を提供する、ドイツでも重要な存在となった。
歴代の首席指揮者には、カール・シューリヒト、ヘルマン・アーベントロート、ヘルベルト・ケーゲル、ヴォルフ=ディーター・ハウシルト、ファビオ・ルイージ、準・メルクル等、巨匠や名匠が名を連ねており、この顔ぶれを見ても同楽団の実力の高さが伺える。中でも1953年から77年まで首席指揮者を務めたケーゲルは、20世紀作品に力を注いで楽団の技量アップに貢献。録音も積極的に行い、マーラー、ショスタコーヴィチ、ウェーベルン、ノーノ等、名盤の誉れ高いディスクによって強いインパクトを与えた。そして2012年からクリスチャン・ヤルヴィが音楽監督を務め、ジャンルの壁を超えた幅広いプログラミングで新たな風を吹かせている。
ドイツの放送オーケストラは、常時放送録音を行う使命ゆえの機能性の高さと、同国伝統の重厚かつ柔らかな響きを併せ持つのが特徴であり、同楽団も豊潤な弦楽器を中心とした音楽性豊かな音色と機能美を有している。加えて、ペンデレツキやシュトックハウゼンの作品の初演をはじめ、現代曲の演奏に多く取り組んできた実績から、モダンでシャープな感覚とフレキシブルな対応力に秀でている。これは他にない強みである上、K.ヤルヴィの持ち味ともピタリと合う。したがって攻めの姿勢に溢れた両者のコラボレーションは現地での評価も上々。今回のコンビ初来日への期待も大きい。